第11回:鳴子温泉で“伝統手法”の小屋づくり(4)〜組立後編〜|エコ・フレンドリー
小屋には個性がある。
小屋には地域性がある。
小屋には自由がある。
宮城県の東鳴子温泉の湯守の森で始まった板倉マイスター講習。1回目のチェーンソー講習、2回目の製材見学、刻み体験などを経て、最終回では、3坪の板倉構法の小屋を2日間で組立てます。組立作業の前編につづき、今回は後編。完成に向けてラストスパートです。
木の皮を使い、芝屋根を作る
今回作る小屋は、板倉構法であることの他にも特徴があります。屋根に土を載せ、ユリの球根を植え芝屋根にするのです。2日目はその芝屋根作りと、外壁作りの2班に分かれて作業をスタートです。
スギの樹皮は、春・秋の彼岸前後の各1ヶ月が剥く適期。寒くなると水分が少なくなり剥きにくくなります。今回は木が水分をあまり吸っていない時期だったこともあり、この作業はなかなか大変でした。
「屋根に土を載せて芝を生やす方式は、北欧やアジアの北方の民家に広く見られます。勾配の緩やかな屋根に樹皮を敷いて、その押さえとして土を載せ、その土が雨で流されたり、風で飛ばされたりしないように、芝を生やします。
日本でも、屋根に草花を植える建築文化が、東北地方を中心にありました。土を固定して棟を強化するために、イチハツやカンゾウ、ショウブや、オニユリ等ユリ科の多年草や、ニラなどの、根がよく張って日照りにも強い草が植えてあります。いったん芝やユリなどの草が根を張れば、その後は手入れはいりません。花の季節には、さながら空中花壇の趣になりますよ」と安藤邦廣先生。
樹皮を敷いた後は、人海戦術のバケツリレーで土を屋根の上にあげていきます!
土を敷いた後、ユリの球根をあちこちに植えました。季節ごとに装いを変えていく屋根。花が咲くのが楽しみです。
地域の資源を活かし、みんなで建てる
今回の組立てでは、板倉マイスター受講生だけでは組立てが難しいため、ご指導役として棟梁の大工さんと、見習い中だという女性の大工さんの2名に来ていただきました。その他、強力な助っ人として、南三陸から『南三陸木の家づくり互助会』の方が3名いらっしゃってくださいました。組立てが進む中、私たち受講生は、助っ人さん達のありがたさを痛感することになります。
『南三陸木の家づくり互助会』とは、地域の森林資源を活用し、会員間の互助による家づくりと暮らしづくりの創造を図り、資源が持続的に循環をする地域づくりを目的とした任意の集まりです。三陸地方には『契約講』という慣習があり、冠婚葬祭や家づくりなどで、お金や人手が必要な時に近所の人たちが助けあう仕組みがありました。この仕組みをもとに出来たのが『南三陸木の家づくり互助会』です。
『南三陸木の家づくり互助会』は、現在30名ほどの会員がおり、すでに南三陸の入谷に食堂、戸倉に事務所を建設されています。これらの柱や梁などには、南三陸の木材が使用され、建設現場では会員同士の互助活動により、建設費用の坪単価を下げることができました。
今回の板倉マイスター講習では、この互助会で作業経験のある方々が、三陸から助っ人に来てくださいました。同じ素人同士ではありますが、一度でも作業のご経験がある方は(実際には、1度どころか2〜3度のご経験がある強者な方々でした)、ここまで違うものか、と思いました。
板倉の組立ての手順が判っているため、動きが早く、時には大工さんからの指示を待たずして、次の工程の準備に取りかかっていらっしゃいました。私たちも床貼りの作業は、三陸の方々に教えてもらいながら作業をしました。
板倉マイスターの受講生たちからも「今度は南三陸にお手伝いに行こう!」という声が上がりました。地域の資源を活かし、大工さんの技術を駆使し、地域の人同士が協力し合いながら組み立てる。そういった輪が各地域内で、また時には地域を超えて広がり繋がっていく。その繋がりの芽が、東鳴子温泉の森で芽生えた2日間でした。
板倉マイスター講習は、2015年度も開催予定とのこと。ご興味ある方は、ぜひ主催団体(NPO法人しんりん)へお問い合せください。
関連リンク
NPO法人しんりん(板倉マイスター講習主催団体)
一級建築事務所 株式会社 里山建築研究所
【写真協力】
清水信義・大林紅子・大沼旅館